BCSD(Backgammon Club of San Diego) The Annual Tournament of Champions


この4月はバックギャモン漬けの月でした。毎週火曜日夜にある地元サンディエゴの "weekly tournament" の他に、6日〜8日には Los Angeles での Gammon Associates Invitational(Patrick Gibson がディレクター)に、そしてここまでたっぷり書いてきたように、11日から17日まではデンマークでの Nordic Open に参加しました。

デンマークから帰ってきた週の土曜日にはこのサンディエゴのクラブでの去年の各月の勝者(毎週のトーナメントでの入賞者は順位に応じて勝ち点を得て、それを月ごとに積算した場合最高得点のプレーヤーがその月の勝者)だけが集まってクラブのチャンピオンを決定する「チャンピオンシップトーナメント」がありました。私は去年の9月にサンディエゴに移ってきて12月に初めてその月の勝者になりました。その12月以前にも週一回のトーナメントではちょくちょく入賞していたのですが、大抵がコンソレーションの勝者である4位か、3位であって獲得点が月の勝者になるには足りなかったようです。一年に複数回月の勝者になったプレーヤーもいて、一人はダブルエントリー、もう一人はなんとトリプルエントリーしていました。

このクラブでの週一回のトーナメントのエントリーフィーから少しずつ積みたてた金額 $100(たったこれだけ:-)が優勝者に与えられるというもので、このチャンピオンシップトーナメント自体はエントリーフィー無しで、ある意味では「超 High equity」なトーナメントです。そして優勝者はこれから一年「サンディエゴチャンピオン」の肩書きが付くというものです。

このクラブは全体のレベルは私が以前住んでいた San Jose-San Francisco エリアのクラブ(BGBB)に比べればあきれるほど低いのですが、さすが各月の勝者を集めただけあって、それなりにまともなプレーヤーがそろいました。とはいうものの数名は「本当に勝った月があるの?」と思いたくなる人も数人いましたが。
 

一回戦目

一回戦は Chris Rosin という(私がサンディエゴに移るまでは)クラブでただ一人のバックギャモントーナメントで $1000 以上の賞金を勝ったことのある人です(彼は 1998年 のLas Vegas の Nevada State Tournament の intermediate で優勝しています)。クラブの中ではもっとも勝つのが大変な相手の一人ですが、出目が普通であれば技術では(特にマッチでのキューブアクションで)こちらにやや分があり、このマッチではダイスにも恵まれて快勝しました。彼はダブルエントリーしておりもう一方のエントリーでは三回戦まで勝ち進んでいました。
 

二回戦目

私の二回戦の相手は過去に4回対戦して全て楽勝だった相手で、このマッチも楽勝でした。(「去年本当に勝った月があるの?」と思いたくなる人の一人でした。)
 

三回戦目(準決勝)

三回戦目に当たった Bruce Haight(GamesGrid では TopGammon ですが、しばらくアクセスしていません。)がそれなりの技術を持ったプレーヤーです。このクラブでは私を除けば唯一の Snowie 派です。私はこのクラブの weekly tournament で彼に何回か負かされています。

このマッチでは途中で私がスコアを勘違いしたキューブを打ってしまって(私にとってはかなり珍しいミス)おかげでマッチ勝率を大きく落としたと思いますが、かろうじて勝ちきり決勝進出を決めました。
 

もう一方の準決勝

さて、もう一方の「準決勝」ではダブルエントリーしていた Chris がはっきり技術の劣るプレーヤーと対戦していました。この勝者が決勝を私と戦い、それに勝ったほうがクラブの「チャンピオン」になるわけです。周りでそのマッチを見ていたクラブのメンバーは Chris に勝ってもらいたいと思っていたでしょう。というのはこれから一年、クラブの「チャンピオン」と呼ばれる人の実力が初心者に毛が生えたようなプレーしかできないと、クラブに新しくやってきた人達に対してまったく示しが付きません。私も内心 Chris が勝ちあがってくれることを望んでいましたが、相手の貧弱なプレーを補ってなおあまる贅を尽くした出目の連続にさすがの Chris のなすすべもなく敗れ去りました。
 

自分の名誉のために、クラブの名誉のために、

やれやれ、困ったことになりました。「去年本当に勝った月があるの?」の思えるプレーヤーの代表格が決勝まで勝ち進んでしまいました。このプレーヤーにチャンピオンになられてしまうと、今度は「このバックギャモンクラブはジョーク」(すでに半ばジョークになっていますが...)とはたから思われかねません。

しかも、つい数日前に Nordic Open で入賞した私がこの大一番でこの相手に負けたりするとそれこそいつまでも語り継がれる笑い話になってしまいます。

すでにこのトーナメントから敗退した人達がこの決勝戦を観戦していましたが、私の見る限りではその観戦者全てはいま私が対戦している人物よりははっきり上手です。(敢えて FIBS のレートで例えれば、最低でも 200 ポイントぐらいの差はあったと思います。私とは 400 ポイント差という見積もりが妥当でしょうか)みんな「なんでこの人が決勝でプレーしているのだろう」そんな気持ちだったに違いありません。実際冗談交じりでそう言っていた人もいたくらいです。

しかしこの相手の(Chris を散々苦しめた)「贅を尽くした出目」は尽きることはありません。すばらしい出目を「ダイス神のバチがあたるぞ」と言いたくなるようなそれはそれはもったいない使い方(ムーブ)をしながらも、彼は湯水のように飛び出す「望み通り」の出目を満喫していました。そしてとうとう9ポイントマッチで 3-7 とリードされてしまいます。

9ポイントマッチはこのローカルクラブでは最長のポイントマッチです(普通はメイン7ポイント、コンソレーション5ポイント)。そして技術の差がこれだけはっきりしている相手に対してこのマッチポイントは大雑把に私に8割近くの勝率を与えてくれると見積もれます。さすがにスコアでこれだけ差が広がると苦しいのですが、マッチでのキューブアクションの理解がほとんどないこの相手に対しては恐らくこのスコアは見た目よりは私に有利に働くはずです(特にギャモンがらみのキューブを平気でテイクしそう)。そして思惑通りのこちらにはっきりギャモン勝ちの見込みがあるが、この相手はまずそうは思わないだろうというポジションに到達して、本来ならキャッシュのところのキューブを差し出し、思った通りこの相手はテイクしてくれ、彼の「贅を尽くした出目」は小休止したか私の攻撃に反抗できずに私のギャモン勝ちで4点を得て 7-7 の同点に追いつきました。

2away-2away というスコアになったら、対戦相手がもうすこしまともならすぐにキューブを2にしてこれをラストゲームにするのですが、この相手に対してはぎりぎりか、もうすでにテイクできないところまで引っ張ってからキューブを打ってテイクさせることを目指していました。事は私の期待に反して常に相手が優位にあり、あるところでとうとう向こうからキューブが来てしまいました。「やれやれ。」(この相手は普通のスコアでも恐らく同じタイミングでキューブを打っていたでしょう。特別にこの 2away-2away というスコアを意識していたとは思えません。)

私は不利でしたが、相手にも悪い目が多くあり、それら悪い目の一つを振れば一瞬でこちらが優位になるという局面でパスできるわけもなくテイクしましたが、やはりと言うべきかダイスは彼を全面支援していました。

キューブが2となった後なにがどうなったか詳しく思い出せないのですが、こちらがややピップで勝っているときにピップカウントのできない相手は自分からディスエンゲージしてくれてありがたくレースに突入したことは覚えています。そしてそのままいけば自然に勝てるかというときに、私はベアオフで2メンオフできない目を二回(三回だったかも)振り、相手はタイムリーな 55 で 5pt に積み上げられた4チェッカーをいっぺんにベアオフして...、といった次第でゲームは進みついに以下の終了図にたどり着きました。(最後の最後で相手は残りの2チェッカーのベアオフに失敗して私がかろうじて命をつないだ場面です。)

この時に相手はかなり動揺していたとみえて(多分「これでゾロ目を振られなければたなぼたのチャンピオンだ。」とでも思っていたのでしょうか)先に振ったダイスを取り上げずにすでにベアオフしたチェッカーをボードのポケットに若干小刻みに震えるおぼつかない手つきできれいに並べようとしていました。私が「ダイスを取り上げてください」と言ってもその動揺からか応えてくれず、私はなかなか最後のダイスを振れずにいました。観戦していたこのトーナメントのディレクターでもある Chris が彼に対してダイスを取り上げなければ私がプレーできないことを告げて、やっと彼は我に帰り慌てて自分のダイスをボード上から取り上げました。

この一振りは気分の悪いものです。これで6回に5回の割合でゾロ目以外の目を振れば負けて、この相手をチャンピオンにしてしまいます。私の Nordic Open のコンソレーション優勝はその時点で真っ黒に汚されてしまうような気がしてなりません。「あー、いやだいやだ」そう思いながら振り出したダイスの目は、...

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私は思わず両手を上げて歓声をあげてしまいました(観戦者からも歓声が!)。Nordic Open のコンソレーション決勝で勝ったときでもこんなリアクションはしなかったのですが...。賞金もたったの $100 のこんな小さなトーナメントですが、「勝たねばならぬ」という気持ちが強かったのでしょう。というよりきっとこのサンディエゴというバックギャモンの世界では弱小の町でお山の大将になりたかったのしょう。そして技術力では優位が明らか過ぎるほど明らかな相手に対して負けるのではないかという、国際トーナメントではまずありあり得ない「神経を錆びたカンナで逆なでする」ような不快なゲームが続いたのと、負ければクラブのみんなに申し訳ないという自分勝手な責任感がこの1ゾロを見た瞬間に思わず私の体を動かしてしまったのです。


なぜ "13th Nordic Open" のエッセイの結末がこんなローカルなトーナメントの話しになったかというと、これで Nordic Open での入賞の喜びが間違い無く増幅されたということと(逆にこれで負けていたらもうエッセイなど書く気力もなかったかも :-)、一瞬の喜びの大きさでははむしろ Nordic Open でのいかなる瞬間よりもこの1ゾロの方が上だったことが確かで、少なくとも私にとってはバックギャモンのトーナメントとはそういったものなのです、と言ってみたかったという訳です。

... おしまい