Joe Moore戦 「8キューブ」

 
Match to 13 point
Game
Sho
Joe
1
2
0
2
2
1
3
6
1
4
6
2
5
6
3
6
7
3
7
8
3
8
16
3

 

「Split しようぜ」「お断りします」

前日(10/29 金曜日)の Jerry 戦に勝ったあとベスト4のトーナメント表を眺めていると、一人の男がやってきてなまりのある英語で私に話し掛けてきます。「おまえが Sho か?」と尋ねてくるから「そうだ」とこたえます。すると唐突に「このベスト4の四人で賞金をスプリットしないか。」と切り出してきました。

「は?」あまりの突拍子もない問いかけに返答のしようにこまっていると、
「おまえ、英語話せるのか?」ときますので(これ、よく言われるんです。そのたびにむっとしてます。)「話せる」と応えて(「英語は話せないからスプリットなどバカな申し出はやめてくれ」と言い返せば良かったと後悔していますが...)まず最初に「あんたは誰だ?次の対戦相手の Joe か?」と聞き返すと、

「いや、おれは(隣のマッチのプレーヤーの一人の名前を指して)Lise のボーイフレンドだ。」(なんだそりゃ)思わず笑い出しそうになりましたが、そこをぐっとこらえて「スプリットなどする気は無い」ときっぱり言い返します。すると、

「なぜだ?この(優勝)賞金が欲しいからか?おまえは勝てると思っているのか?」とさらに抜けたことを聞いてきます。賞金を分け合った場合の計算を書き込んだ小さなノートを私に見せながら説明した彼の言い分はこうです:
ここでベスト4が賞金を(マッチをプレーせずに)スプリットすれば、一人あたり $4562 をもらえることになり、これは2位の賞金額 $3800 よりも $700 以上も高いのでよほど優勝する自信がなければこっちのほうが得だろう。

「マッチをプレーするためにここまで来てるんだ。せっかくのセミファイナル・ファイナルをプレーするチャンスを無駄にする気は無い。スプリットはしない。」ときっぱりと断りました。

残念そうに頭をたれて、この「Lise のボーイフレンド」氏は立ち去っていきました。
 

さて、あとで知ったのですが、このメインのトーナメントでは Split は違反行為だったようです。トーナメントマネージャーが特別な事情でスプリットさせることはあるかもしれませんが、それ以外ではスプリットはできないはずです。たぶんこれは Calcutta のオーナーに対する配慮の意味もあるのでしょう。つまり、このスプリットで影響を受けるのはこのベスト4のプレーヤー4人だけではなく、この4人のうち一人の Calcutta を買っている人(多分20人から30人)も影響を受けるわけです。そしてもしも「優勝候補」と信じて買ったプレーヤーがスプリットしたとなると、Calcutta のオーナーは怒るに違いありません。

もうひとつ余談。後日 Flint Area Backgammon News を読んで知ったことですが、実はこの Las Vegas Open の Championship division でこのスプリットに似た違反行為があったそうです。クオーターセミファイナルを戦っていた David Brown と Leo Fernandez が試合の途中で談合し、Leo をこのマッチの勝者にしてセミファイナルに進める代わりに賞金の 65% を David が受け取るという内容で両者合意してマッチを終わらせてしまったそうです。当時者二人はこのやり取りがルール違反であることを知りませんでしたので、一連の行為は多くの観戦者の目の前で堂々と行われたそうです。この時にトーナメントの最高責任者の Howard はもう自分の部屋に帰ってしまっていて、現場にいたマネージャーたちではルールに従った正しい対応ができなかったらしく、Leo は Rick Barabino とセミファイナルを始めてしまい、結局そのマッチに勝ってしまいました。翌日に Howard がこの事実を知ったあとに急きょ対策委員会を作って対応を練り、結局 Leo と David は失格とし、Leo のセミファイナルの勝利も取り消され、負けた Rick Barabino が決勝にすすんで最終的にトーナメントに優勝するという結果になりました。私はこのときには裏でこんな大事件があったなど全然知りませんでしたが、一部では大騒ぎになったいたようです。

なんにしても、あのスプリットの申し出は断って正解でした。


Sho-Joe (セミファイナル)戦


土曜日の朝一番。次の対戦者、やさしそうな風貌の年配 Joe Moore とトーナメント表の前で会って、広い会場(もうこの時点で生き残っている人はほんの一握りなので、会場のテーブルはガラガラ)でどこでプレーしようかと相談して、結局もっとも奥の(トイレの近く:-)もっとも閑散としたテーブルをセミファイナルの場所にしまいした。感じから言って、昨日対戦した Jerry よりもさらに気楽にプレーするタイプです。彼には全然「セミファイナル」の気迫はありませんでした。私も特別気合を入れていたわけではありませんから(「勝てればラッキー、負けても残念賞」程度に考えていましたから)気は合ったようです。

まず試合の前にスプリットはしないことをお互い確認します。どうやら、「Lise のボーイフレンド」氏はこの Joe にもスプリットの話を持ちかけていたようです。そして私がスプリットを強く断ったことも伝わっていました。

13ポイントというトーナメントではいままでに経験した長い(はずの)マッチでしたが、あまり緊迫感もなく終わってしまったためか内容をよく覚えてません。ひとつだけ挙げるとすれば、最後のゲーム(結果的に最後のゲームになってしまったゲーム)ででてきたこの局面(例によって、正確に実際のポジションを再現しているとは限りませんのであしからず):

5ポイントマッチのリダブルについては Kit Woolsey のオンラインマガジン GammOnLine の記事を読んで詳しく勉強したのですが、このスコア(5away-10away)はどうすればいいのか考えたこともありませんでした。ポジションは明らかに私が圧倒していてマネーゲームなら簡単にキャッシュでしょう。ここで少し考えて、ここでダブルして事故に遭ってリダブルもしくはギャモンを落としても 8-10 (5away-3away)で絶望というわけではないし、リダブルして4点勝ってもまだクローフォードなのですぐには8のリダブルは返ってこないだろうし、第一これって自分が Joe の立場ならパスしたくなるほどのポジションだからここは思いきって4のリダブルすべきと決意し、ポンと4のキューブを差し出しました。おどろいたことに Joe は考える間もなくテイクです。少しぐらい迷ってくれてもいいと思ったのですが...。

次のロールではたしかアウトのブロットをクリアーできずにその代わりに自分のバーポイントの駒をベアインさせたと思います。(記憶がおぼろげです。)とにかくダイレクトショットと残す勝負手を避けたと覚えてます。さて私がダイスを取り上げた次の瞬間、Joe は何を思ったか

リダブル 8キューブ!!!

私は一瞬「さっきリダブルした時にスコアを勘違いしたか?」と思い、再度私のスコアシートを確認しますが、間違いありません。8-3 です。

その場で観戦していた Timothy Jaxson (BGBB のメンバーの一人。GamesGrid/FIBS では "StrangeLuck")はこのマッチのあと、「あの(Joe)のリダブルはとんでもないエラーだ」と言っていましたから、私がなにか勘違いしていた訳ではなさそうです。

もちろんテイクするしかありません。つまらない事故で8点失って逆転されるのはいやですが、無事にアウトフィールドのブロットをクリアすれば後は楽勝で、マッチも勝ってファイナリストです。その後何の目を出したか覚えてませんが、ごく普通にこのゲーム、すなわちマッチを勝ち取りました。

なぜ Joe があのような奇妙なリダブルをしたのか考えてみました。ここまで勝ち進んできた彼のことです、このリダブルが正しくなかったことはきっと承知の上でしょう。
 1. もうこのトーナメントでは善戦したので贅沢言うまい。
 2. ここまでリードされてから逆転するのはどの道簡単ではない。楽に勝てるならそれでいこう。
 3. 観戦者も一人しかいないことだし、バカをするなら今しかない。
 4. ここは Las Vegas だ。ギャンブルしないでどうする。
まあ、こんなところじゃないでしょうか。
 

というわけで、あっさりと決勝進出を決めました。


Lise-Guy (セミファイナル)戦「見ないでもらえる?」

比較的短時間で決着のついたセミファイナルが終わって会場を見渡してみると、あの「Lise のボーイフレンド」氏がすぐ横で観戦している試合がありました。彼の隣にいる実際にプレーをしている若い女性が「Lise のボーイフレンド」氏のガールフレンドの Lise さんでしょう。わくわくしながら試合を覗きにいきますと、Lise が私の方を見上げて、(これが初対面だったんですが、彼女はすでに私が誰であるのか知っていたようです。ボーイフレンド氏が耳打ちしたのかもしれませんが。)

「悪いけど、観戦しないでもらえる?すこしでもそちらが有利になるかもしれないから。」

と観戦を拒否されてしまいました。Very シリアスです。観戦拒否はバックギャモンを始めて1年でこれが始めてです。このエッセイを書いている時点でも、これが私が経験した唯一の観戦拒否です。二日前に私が対戦した Jerry とはまったく正反対の対応なのも面白いと思います。

上の彼女の言葉の裏をかえしてみれば、彼女はこの時点でもうこのセミファイナルのマッチには勝って決勝に進出するつもりでいたのでしょう。事実そうなることになりますが、相当の実力者ということでしょうか。明日が楽しみになってきました。