home モナコ記 by 梶 善登

めらんちょ(以下、M):こんにちは、インタビュアーのめらんちょです。今日はモナコのバックギャモンの世界大会に参戦された梶君にインタビューしてみたいと思います。
梶(以下、K):こんにちは。

M:まず、どのような経緯でモナコの大会に参加されたのですか?
K:ええ、しあがりです。今、レベル上げで大変です。

M:はい、FFの話は結構です。逃避モードはやめて、真面目にお願いします。
K:ああ、そうですね。すみません。昨年(1999年)の10月に日本選手権に付随して開かれた初級戦で、僕は幸運にも優勝することができ、モナコはモンテカルロのバックギャモンの大会に派遣されることとなったわけです。たしか、今年の初級戦の優勝者もまた派遣されると聞いています。

M:なるほど。その派遣という優勝賞品はかなりお得な感じを受けますね。さて、モンテカルロの大会とはどのようなものなのでしょうか?
K:World Championshipと呼ばれているもので、このトーナメントに優勝すると、世界で一番強いと認められうる大会です。それだけあって、世界中から強豪達が集まります。今年は260人くらい集まったようです。昔は違う場所で行われたみたいですが、今はモンテカルロです。

M:モナコとモンテカルロ…あまり馴染みが薄いのですが、どういう所なのでしょう?
K:確率的に問題を解くやり方ですね。

M:それはモンテカルロ法でしょう?うんちくはいいです。
K:どうでもよかったですね。モナコはフランスの南部で、イタリアの国境付近にある独立国です。モンテカルロはその国にある街で、広さは皇居の2倍くらいですね。地中海に面している、山の腹に位置しています。まぁ、熱海みたいな感じでしょうか?夏でも涼しく、リゾート地として有名ですね。

M:他になにか有名なものはありますか?
K:F1グランプリが開かれるところでもありますね。また、カジノがあることでも有名です。ここのカジノで負けた数学者が、さきほど出たモンテカルロ法をあみだしたんですよ。

M:あ、そうなんですか?
K:嘘です。

M:…
K:すみません。

M:カジノには行かれましたか?
K:あと、1cmずれてたら!(注:ジャックポットマシーンのことである。いっしょに行った中村さんは開始3分くらいで、ジャックポットを当てた。何者!?)

M:しあがったってことですね。(笑)モンテカルロのカジノはお金持ちを相手にしているため、設定が相当からいようですね。さて、話題を本題に戻して、大会の会場はどこだったのですか?
K:モンテカルロ-グランドホテル(旧ローズホテル)というホテルです。海に臨んだとっても大きいホテルですよ。モナコグランプリで有名なヘアピンカーブのあるところです。超高級ホテルで、一泊3〜5万円くらいかかるみたいですね。

M:げ、そのホテルに泊まられたのですか?
K:いえ、そこから10分ほど歩いたところにあるアレキサンドラホテルに中村さんと泊まってました。このホテルも綺麗なホテルでしたね。位置的にはグランドホテルよりも上にあり、坂道を上り下りして会場まで向かってました。

M:「敗者の坂道」として有名ですね。
K:ええ、会場から帰るときは足が重かったです。

M:それはお気の毒に。さて…
K:ほんとに気の毒って思ってます??

M:いえ、別に。
K:なんだかなぁ。

M:そんなことよりも、日本からは何名ほど参加されたのですか?
K:…まぁ、いいか。えっと、まず、JBLのトーナメントディレクターである下平憲治さん、昨年、日本チャンピオンになられた中村幸男さん、そのお友達の平井さん、また、モナコではマダム・カズコとして有名な沼沢和子さん、そして僕の計5人です。

M:さて、大会の雰囲気について教えていただけますか?
K:会場はグランドホテルのサラ・ド・オレという広間で下手な体育館よりも広いところでした。ここに机とギャモンボードがずらりと並んでいるわけですね。丁度、今年の地区対抗戦の会場みたいな感じでした。実はギャモンボードは日本バックギャモン協会が所有しているのと同型で、チェッカーが白と濃い青でした。でも、結構ボードがボコボコで、自分のボードを使っているプレイヤーも多かったですね。

M:なるほど。朝からずっとバックギャモンをやっていたのですか?
K:いえ、基本的にヨーロッパのトーナメントは、午後からスタートするんですよ。特にモンテカルロはのんびりしていて、午後2時とか4時とかからの会場が開いてましたね。まぁ、その分、夜はかなり遅くまで開いています。

M:大会のスケジュールを簡単にお話していただけますか?
K:まず、初日はトーナメントの参加申し込みと、ウェルカム・カクテルがあります。飲み放題ですが、立食なので疲れますね。そしてその次の日から、トーナメントが開始されます。その日はメインの2回戦まで進んだところで終了です。3日目は一休み入って、スーパージャックポットが開かれます。また、この日にはガラ・ディナーというパーティーが夕方から別の会場で開かれます。

M:ガラ・ディナーとは?
K:ええ、正装して参加するディナーで、ショウを見物できます。そのショウがすごかった。異常に体が柔らかい女性やジャグラーのお兄さん、歌に踊りに早変え(あっというまに服がかわる)なんかがありましたね。中でも圧巻だったのは人が輪っかの中に入って、ぐるぐるとまわるんですよ。あれは派手でしたね。

M:なるほど、楽しそうですね。
K:4日目からは、コンソレーションがスタートします。コンソレーションは2つに別れていて、5日目にはコンソレ2が開始されます。6日目にはラストチャンス、7日目にはスポンサー主催のチームイベントがありました。また、この日にはメインの決勝戦が行われますね。それらが終了すると表彰式となります。話は全然変わるんですけど、この7日目、みなさんと一緒にカフェで夕食をとったんですよ。いやぁ、そこのチキンカレーがものすごく美味しかった♪

M:そうですか。食事といえば、生活などはどのようにされていたのですか?
K:朝は同室の中村さんといっしょに、近所のスーパーでサンドイッチやお惣菜を買っていました。一度、沼沢さんのお部屋にみんな集まって、朝食会を開きましたね。沼沢さんがインスタントライスというお湯を入れると温かいご飯になるやつを持ってきていらっしゃったんですよ。パン食に飽きていたので、とても美味しかったですね。

M:ああ、なるほど、ホームシックにかかって、へたれていたわけですね。
K:お前なぁ…ま、そういうことなんですけどね。

M:夕食はどうされていたんですか?
K:大抵はみなさんといっしょでした。沼沢さんにはほとんどの夕食をごちそうしてもらい、頭が上がりません。また下平さんにもしょっちゅうおごってもらってました。

M:それは日本にいる時とあまりかわりませんねぇ。
K:いや、本当にお二人方にはお世話になりました。

M:大会の結果はどうだったのですか?
K:もわん。

M:何か口から出てるみたいですけど?というか、会話中にエクトプラズムを吐かないでください。
K:おっと、失礼。メイントーナメントは2回戦負け、その他は全て1回戦負けです。

M:散々ですね。
K:うう…

M:それについて、何か言いたい事はありますか?
K:うーん。モンテカルロにいる時には、何故負け続けるのかわからなかったのですが、落ち着いた今となってみると、単なる実力不足だったと思います。でも、いろいろ考える事はありますね。モナコで下平さんに相談すると、「場に慣れていないからだよ」と言われました。確かにそれもあったと思います。

M:なるほど。そう言えば、コンソレーションでひどい目にあったらしいですね。
K:ええ、相手が変なプレイヤーでプレイ中に文句を言ったり、1ポイントボードでダンスすると、席を立ってどこかへいってしまったり、いきなりダイスカップを遠くにほおり投げてしまったりして、正直言ってビビりました。

M:それで負けましたか。
K:悔しいけど、そうですね。僕はモナコに行く直前まで、スノーウィーと呼ばれるコンピューターソフトで調整していたんですが、コンピューターは文句を言わない。でも、僕が実際に勝負する相手は人間であって、そういうマナーの悪いプレイヤーもいるわけです。僕は純粋にギャモンのことだけを考えて、そうしたことを考えていなかった。それがモンテカルロでの最大の敗因だと思います。

M:いわゆる生ギャモン(インターネットなどでなく、人間同士がひざを突き合わせてやること)に慣れていなかった、ということですね。
K:そうです。その研究が不充分だった。

M:なるほど。
K:また、僕はモナコに行く前に、よく考えていたことがありまして、「勝っていいのか?」という事なんですよ。人は勝負事に負けると悲しい。僕が勝つと相手はマイナスな気分になるわけです。まぁ、自分が負けると自分が悲しいんですけどね。なんだか、そういうのが嫌になってきましてね。そう考えてくると、勝ってもうれしくなくなってきた。昔はそういう事なんか、少しも考えなかったのに不思議です。

M:ひょっとすると勝負事に向いてないのかもしれませんね。
K:うーん。そうかもしれない。

M:でも、楽しみながらバックギャモンをやっている方もいらっしゃると思いますが。
K:そういうのとはまた別の次元の話なんですよ。でも、僕はそういうギャモンには、僕自身、戻れない気がします。

M:では、もう純粋に勝負事としてのバックギャモンですね。
K:ええ。

M:では、あなたは人と勝負するのが嫌で、スノーウィーとばっかり対戦したのですか?つまり、スノーウィーに逃げたと。
K:そういうことなんでしょうね。

M:そこに楽しみはありましたか?
K:いや、なかった。

M:私は思うんですけど、あなたは今後も研究を続けて、強くなって、いわゆるエラーレートが低くなったとしても、まぁ、バックギャモンだから出目で試合に負けることもあるでしょう。その時に、多大なストレスを受けることと思います。また、勝ったとしても、相手を気の毒に思い、やはりストレスを受けるでしょうね。
K:…

M:あなたはお金のためにバックギャモンをやりますか?
K:多分、やらない。

M:じゃぁ、あなたがバックギャモンを続ける理由はなんですか?強くなって尊敬されたいからですか?負けることに喜びを見出すマゾヒストだからですか?数学の問題を解くような気分で、かっちりとバックギャモンの問題を解くことが楽しいからですか?理由なんてあるのですか?
K:…理由なんてなくなったかもしれない。

M:それでは、あなたはバックギャモンをやめますか?
K:…。僕がギャモンを続ける理由を今、見出すことはできない。

M:なるほど。
K:でも

M:でも?
K:…昔、他の事をやっていた時も同じように感じたことがある。そう感じた僕はその興味を持っていた事をあっさりとやめて、切り捨ててきた。けれど、もうそういう風に放り出すことはしたくない。今、別にやる理由がないからといって、やめる事は簡単だけど、このギャモンというテーマについてはやりたくない。昔、僕が友達からギャモンを教えてもらった時、このテーマには何かあると思った。今でもできればそう思いたいし、きっとギャモンをやる理由は再び見つかると思う。しばらくはやるのが苦痛かもしれないけどね。多分、次に見つける理由は、単純なものではなくて、僕独特の、そして堅牢なものだと思う。それが見つかると思ってるから、ギャモンはやめないよ。

M:ソノオモイガツヅクトイイデスネ。
K:そうだねぇ。

M:本日はどうもおつかれ様でした。最後に一言お願いします。
K:今は夢のあるバックギャモンがしたいです。

2000年7月30日 梶 善登


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